
口腔内外傷
口腔内外傷
口腔内外傷とは、事故や転倒、スポーツ、暴力などによって、お口の中やその周辺の組織が損傷を受けることです。歯の破折や脱臼、唇や頬の切り傷、顎の骨折など、さまざまな形態があり、程度も軽微なものから重篤なものまで多岐にわたります。口腔内外傷は、見た目の問題だけでなく、咀嚼や発音といった機能面、さらには精神的な面にも影響を与える可能性があります。受傷直後の適切な処置が、その後の予後を大きく左右するため、早期の診断と治療が非常に重要です。当院では、口腔外科の専門医が、豊富な経験と専門知識に基づき、迅速かつ丁寧な対応を心掛けております。もしもの際には、迷わず当院にご連絡ください。
口腔内外傷は、損傷を受けた部位や組織、その程度によって細かく分類されます。主な種類としては、以下のものが挙げられます。
歯冠破折
歯の見える部分(歯冠)が欠けたり、割れたりするものです。程度によって、エナメル質の小さな欠損から、神経(歯髄)が露出する大きな破折まであります。
歯根破折
歯の根の部分(歯根)が割れるものです。目に見えないことが多く、歯の動揺や痛み、歯ぐきの腫れなどで気づかれることがあります。
歯の脱臼
歯が完全に抜け落ちてしまう完全脱臼と、歯が部分的に抜けかかっている不完全脱臼があります。特に完全脱臼の場合、適切な応急処置と迅速な再植が重要となります。
歯の亜脱臼
歯がわずかに動いたり、グラグラしたりする状態です。歯を支える組織(歯根膜)が損傷を受けています。
歯の陥入
歯が歯槽骨の中にめり込んでしまう状態です。主に乳歯に起こりやすい外傷です。
歯肉裂傷
歯ぐきが切れたり、裂けたりするものです。出血を伴い、感染のリスクがあります。
歯肉挫傷
歯ぐきがぶつかって傷つき、腫れたり、出血したりするものです。
歯槽骨骨折
歯を支える骨(歯槽骨)が折れるものです。歯の動揺や噛み合わせのずれ、痛みなどを伴います。
口腔粘膜裂傷
頬の内側、唇の裏側、舌などが切れたり、裂けたりするものです。出血しやすく、食事や会話に支障をきたすことがあります。
口腔粘膜挫傷
口腔粘膜がぶつかって傷つき、腫れたり、出血したりするものです。
顎関節の損傷
顎の関節(顎関節)が外れたり(脱臼)、靭帯や関節包が損傷したりすることがあります。口が開けられない、閉じられない、強い痛みなどの症状が現れます。
神経損傷
外傷によって、顔面神経や三叉神経などの神経が損傷を受けることがあります。知覚麻痺や運動麻痺などの症状が現れることがあります。
口腔内外傷の原因は多岐にわたりますが、主なものとしては以下のものが挙げられます。
転倒
歩行中や走行中のつまずき、階段からの転落などによるものです。特に小さなお子様や高齢者に多く見られます。
交通事故
自転車、バイク、自動車などによる衝突事故。強い衝撃が加わるため、重度の口腔内外傷を引き起こす可能性があります。
スポーツ
サッカー、バスケットボール、格闘技など、接触を伴うスポーツや、ボールなどが顔面に当たる可能性のあるスポーツで発生しやすいです。マウスガードなどの予防策が重要となります。
偶発的な事故
物が落下してくる、誤って硬いものを噛んでしまうなど、日常生活の中で予期せず起こる事故によるものです。
衝突・接触
人とぶつかったり、何かに顔面をぶつけたりすることによるものです。
虐待
意図的に加えられた暴力による外傷も、残念ながら存在します。
医療事故
歯科治療中や外科手術中に、偶発的に口腔内や周囲の組織を傷つけてしまうことがあります。
口腔内外傷の診断には、受傷状況や症状を詳しくお伺いする問診と、口腔内および顔面全体の状態を視覚的に確認する視診が基本となります。必要に応じて、以下の検査を行うことがあります。
視診・触診
損傷部位の状態(出血、腫れ、変形など)、歯の動揺、噛み合わせの状態、知覚の有無などを直接確認します。
レントゲン検査
歯の破折、脱臼、顎の骨折の有無や程度を確認するために行います。必要に応じて、さまざまな角度からのレントゲン撮影を行います(パノラマレントゲン、デンタルレントゲンなど)。
CT検査
より詳細な骨の状態や、軟組織の損傷、出血などを確認するために行われることがあります。特に顎骨骨折や顔面骨骨折が疑われる場合に有効です。
神経学的検査
知覚麻痺や運動麻痺などが疑われる場合、神経の機能を評価するための検査を行います。
歯髄電気診断検査
歯の神経(歯髄)の生死を判定するために行うことがあります。歯の破折や脱臼などで、歯髄が損傷を受けている可能性がある場合に実施します。
口腔内写真撮影
受傷直後の状態を記録し、治療の経過を観察するために行います。
当院では、患者様の状態に合わせて適切な検査を選択し、正確な診断に基づいて治療計画を立てていきます。検査内容や目的については、事前に詳しくご説明いたしますのでご安心ください。
口腔内外傷の治療法は、損傷の種類、程度、受傷からの時間などによって大きく異なります。以下に主な治療法を挙げます。
歯冠破折
破折の程度が小さい場合は、接着性のレジン(歯科用プラスチック)で修復します。神経が露出している場合は、歯髄の保護治療(MTAセメントなど)や根管治療が必要になることがあります。
歯根破折
破折の程度や部位によっては、抜歯となることがあります。保存が可能な場合は、歯の固定や歯周外科手術を行うことがあります。
歯の脱臼
(完全脱臼)
可能な限り速やかに再植を行うことが重要です。脱落した歯は、乾燥させないように牛乳や生理食塩水に浸して持参してください。再植後、歯の固定を行います。
歯の脱臼
(不完全脱臼、亜脱臼、陥入)
歯の位置を整復し、周囲の歯と固定して安静を保ちます。必要に応じて、神経の治療を行うことがあります。
歯肉裂傷
傷口を洗浄し、必要に応じて縫合します。感染予防のための薬を投与することもあります。
歯肉挫傷
通常は自然に治癒しますが、痛みがある場合は鎮痛薬を使用します。
歯槽骨骨折
骨折部位や程度によって、歯の固定や外科的な整復手術を行うことがあります。
口腔粘膜裂傷、
顔面皮膚裂傷
傷口を洗浄し、必要に応じて縫合します。感染予防のための薬を投与することもあります。
口腔粘膜挫傷
通常は自然に治癒しますが、痛みがある場合は鎮痛薬を使用します。
顎関節脱臼
速やかに整復を行います。再脱臼を防ぐために、一定期間安静を保ち、開口制限などの指導を行います。
顎関節の靭帯損傷など
安静、冷却、鎮痛薬の投与などを行います。症状が改善しない場合は、関節固定や手術が必要になることがあります。
神経損傷
自然治癒を待つことが多いですが、程度によっては薬物療法や手術が必要になることがあります。
口腔内外傷の治療は、受傷直後の初期対応が非常に重要です。受傷直後に適切な処置を行うことで、その後の予後が大きく左右されます。当院では、24時間体制で緊急の対応も行っておりますので、お困りの際には、まずはご連絡ください。
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